Arduino VENTUNO Qとは?できること・スペック・AI・ロボット開発まで初心者向けに徹底解説

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Arduino VENTUNO Qとは?できること・スペック・AI・ロボット開発まで初心者向けに徹底解説







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Arduino VENTUNO Qとは?できること・スペック・AI・ロボット開発まで初心者向けに徹底解説

2026年、Arduinoから「VENTUNO Q(ヴェントゥーノ キュー)」という、これまでのArduinoとはまったく違うタイプの新しいボードが登場しました。AIが「考え」、ロボットが「正確に動く」。この2つを1枚の基板で両立させた、Arduino史上もっとも高性能なボードです。難しそうに見えますが、ひとつずつ、子供でもわかるようにかみくだいて解説していきます。

YOFUKASI LAB編集部
公開日:2026年10月2日
読了目安:18分

執筆・実機検証:YOFUKASI LAB運営者

理学療法士/Arduino・Pythonを使った医療機器制作・学会発表経験あり

🤖 この記事でわかること

気になる項目から読んでも大丈夫です。

  • VENTUNO Qとは何か、名前の由来 → 1章へ
  • 「2つの頭脳」を持つ仕組み → 2章へ
  • 詳しいスペック一覧 → 3章へ
  • AIで何ができるのか → 4章へ
  • ロボットをどう動かせるのか → 5章へ
  • 具体的な活用シーン → 6章へ
  • 実際のロボットアーム活用例 → 7章へ
  • 開発ソフト「Arduino App Lab」 → 8章へ
  • 価格・購入方法 → 9章へ
  • Raspberry Pi・Jetson・普通のArduinoとの違い → 10章へ
  • むずかしい用語のミニ辞典 → 用語集へ
Chapter 01 / What is VENTUNO Q

01Arduino VENTUNO Qとは?名前の由来

まず「VENTUNO Q」が、どんなボードで、なぜこの名前が付いたのかから見ていきましょう。

VENTUNO Qの名前の由来とArduino21周年を解説した図解

かんたん説明
「VENTUNO(ヴェントゥーノ)」は、イタリア語で数字の「21」を意味する言葉です。Arduinoという会社は、2026年でちょうど誕生から21年を迎えました。その「21歳の誕生日」を記念して名付けられたのが、このVENTUNO Qです。これまでのArduinoは「決まった通りに動く」のが得意でしたが、VENTUNO Qは「自分で考えて、判断して、動く」ことができる、大人になったArduinoというイメージです。

Arduino公式サイトでは、VENTUNO Qを「Where AI Takes Action(AIが行動を起こす場所)」というキャッチコピーで紹介しています。これは、AIが画像を見て「何をすべきか」を考える力(AI)と、モーターやロボットを正確に、かつ素早く動かす力(アクチュエーション)の、両方を1枚のボードにまとめたという特徴を表しています。

2026年3月9日、Arduinoは公式ブログでVENTUNO Qを発表しました。半導体大手のQualcomm(クアルコム)と共同で開発されたこのボードは、「AI、ロボティクス、アクチュエーション(実際に機械を動かすこと)」の新しいプラットフォームと位置づけられています。同年8月25日には、価格299ドル(予告価格、今後変動の可能性あり)での予約受付が開始されました。

技術メディアEngadgetは、このボードについて「物理世界を、精度と信頼性をもって動かし、操作し、反応するシステムのために設計された」ものだと紹介しています。「考えるだけ」のAIボードではなく、「考えたことを、実際の機械の動きにつなげる」ところまでを見据えて作られている点が、VENTUNO Qの核心だと言えるでしょう。



Chapter 02 / Dual-Brain Architecture

02「デュアルブレイン」という新しい仕組み

VENTUNO Qの最大の特徴は、1枚のボードに「2つの頭脳」を積んでいることです。それぞれの役割を、順番に見ていきましょう。

VENTUNO QのAIブレインとアクションブレインのデュアルブレイン構成図

かんたん説明
人間の体で例えると、VENTUNO Qには「考える頭(AIブレイン)」と「体を動かす小脳(アクションブレイン)」の、2つの頭脳があるようなイメージです。カメラで見た映像から「これはコップだ、だからこう動かそう」と考えるのは「考える頭」の仕事。実際に「今、何度回転させて、何ミリ秒後に止める」という、素早く正確な動きを担当するのが「体を動かす小脳」の仕事です。この2つが、専用の連絡通路(RPCブリッジ)で、ひっきりなしに情報をやり取りしています。

AIブレイン:Qualcomm Dragonwing IQ8

1複雑な「考える」処理を担当

カメラの映像を認識したり、音声を聞き取ったり、文章を理解したりといった、計算量の多いAI処理を担当するのが、Qualcomm(クアルコム)社製の「Dragonwing IQ8(型番:IQ-8275)」というチップです。8コアのKryo(クライオ)CPU、Adreno 623 GPU、そしてAI専用の演算器であるHexagon NPU(最大40 TOPS=1秒間に40兆回のAI演算が可能)を搭載しています。

アクションブレイン:STM32H5マイコン

2素早く・正確に「動かす」処理を担当

一方、モーターやセンサーなど、実際のハードウェアを動かす役目を担うのが、STマイクロエレクトロニクス社製の「STM32H5F5」というマイコンです。Arm Cortex-M33コアを250MHzで動かし、1ミリ秒を切るレベルの「即座の反応(sub-millisecond response)」を実現します。これは、通常のArduino UNOと同じ系統の、リアルタイム制御が得意なチップです。

なぜ、わざわざ2つのチップに分ける必要があるのでしょうか。理由は、AIとロボット制御それぞれに求められる「得意分野」が、正反対だからです。

  • AIの処理(画像認識など)は、計算量が多く、答えが出るまでに数十〜数百ミリ秒かかることがあります。
  • ロボットのモーター制御は、逆に「今すぐ、正確に」反応しないと、物を落としたり、ぶつかったりする危険があります。

そこで、「考える」のが多少ゆっくりでもよいAIブレインと、「反応」が絶対に速くなければならないアクションブレインを分担させることで、賢さと安全性・正確さの両方を実現しています。この設計思想は、「複数の機器を組み合わせる複雑さ・遅延・コストをなくす」ことを目指したものだと、Arduinoは説明しています。

Chapter 03 / Full Specifications

03スペック一覧を徹底解説

カタログスペックを、表で整理しました。専門用語には簡単な補足も添えています。

Arduino VENTUNO QのAI性能40TOPSや16GBメモリなど主要スペック一覧

項目 内容
AIブレイン(SoC) Qualcomm Dragonwing IQ8(IQ-8275)
CPU 8コア Qualcomm Kryo、最大2.36GHz
GPU Qualcomm Adreno 623
NPU(AI性能) Qualcomm Hexagon、最大40 TOPS
ISP(画像処理) Qualcomm Spectra 692
アクションブレイン(MCU) STM32H5F5(Arm Cortex-M33、250MHz)、1.5MB RAM/4MBフラッシュ
メインメモリ 16GB LPDDR5(CPU・GPU・NPUで共有)
ストレージ 64GB eMMC+M.2スロット(NVMe Gen.4 SSD増設可)
無線通信 Wi-Fi 6(2.4/5/6GHz)、Bluetooth 5.3
有線LAN 2.5Gbイーサネット(RJ45)
カメラ MIPI-CSI(4レーン)× 最大3系統
映像出力 HDMI(4K対応)、USB-C(DisplayPort Alt Mode)
USB USB-C(ホスト/デバイス兼用)、USB 3.0 Type-A × 2
産業用通信 CAN-FD対応
拡張互換性 Arduino UNO用シールド、Raspberry Pi用HAT(40ピン)、Qwiicコネクタに対応
電源 USB-C(5V/3A)、DCジャック(12〜24V)、ネジ端子台(7〜24V)
サイズ 160×100×25.8mm
OS Ubuntu(Ubuntu Pro対応)、Debian(提供予定)
価格 299ドルから(予告価格、2026年8月時点)
かんたん説明
「TOPS(トップス)」は、AIがどれだけたくさんの計算を1秒間にこなせるかを表す単位です。数字が大きいほど、より複雑なAI(たとえば「これは何の動物?」をすぐに判断するような処理)を、サクサク動かせます。VENTUNO Qの「40 TOPS」は、一般的な学習用ボード(数TOPS程度)と比べて、けた違いに高い性能です。

特に注目したいのは「16GBのRAM」と「M.2スロットによるSSD増設」です。これは、一般的なマイコンボードはもちろん、多くのシングルボードコンピュータと比べても、かなり余裕のあるスペックです。大きめのAIモデル(後述するLLMなど)を、クラウドに頼らず手元だけで動かすことを意識した設計だとわかります。



Chapter 04 / AI Capabilities

04できること①:AIで「考える」

VENTUNO QのAIブレインは、どんな種類のAIを動かせるのでしょうか。公式に対応が案内されている代表的なモデルを紹介します。

VENTUNO Qでできる言語AI・音声認識・画像認識・オフラインAIの図解

1言葉を理解する(LLM・VLM)

「Qwen 4」「Gemma 4」といった、文章で質問に答えたり、指示を理解したりする大規模言語モデル(LLM)を、インターネットにつながず、ボード単体で動かせます。さらに「Qwen 3 VLM」のような、画像と言葉を同時に理解するVLM(視覚言語モデル)にも対応しており、「カメラに映っているものについて、言葉で説明・質問できる」ことが可能になります。

2声を聞く・話す

音声認識の「Whisper」、音声合成の「Melo TTS」「Piper TTS」にも対応しています。これにより、インターネットに接続しなくても動く「オフライン音声アシスタント」のような装置を作ることができます。

3映像を見て理解する

物体を検出・追跡する「YOLO-X」、手や体の動きを認識する「MediaPipe」、人の姿勢を推定する「PoseNet」といった、画像・映像系のAIモデルにも対応しています。防犯カメラのような見守り用途から、ジェスチャーで操作する装置まで、幅広く応用できます。

かんたん説明
これまでのAI装置の多くは、「写真をインターネット経由でAIの会社に送り、答えが返ってくるのを待つ」という仕組みでした。VENTUNO Qは、その「考える部分」をボードの中だけで完結させられるのが大きな特徴です。インターネットが無い場所でも、通信の遅れを気にせず、すぐに答えを得られます。

また、開発者向けの機械学習プラットフォーム「Edge Impulse」や、Qualcomm自身が提供するAI開発ツール「Qualcomm AI Hub」との連携も案内されており、すでに学習済みのモデルを使うだけでなく、自分たちで用意したデータでAIモデルを育てる(学習させる)開発にも対応しやすい環境が整えられています。

Chapter 05 / Robotics & Actuation

05できること②:ロボットを「正確に動かす」

AIが「考えた」結果を、実際のモーターやロボットの動きに変える部分、つまりアクションブレインの仕事です。

1Arduino譲りの確かな制御

アクションブレインのSTM32H5マイコンは、「Arduino Core on Zephyr RTOS」という仕組みで動いています。これは、普段からArduino UNOなどで使われているプログラミングの書き方(スケッチ)に近い感覚で、モーターやサーボ、センサーを制御できることを意味します。

2豊富な入出力・産業用通信

一般的なデジタル・アナログ入出力に加え、工場の機械などでよく使われる堅牢な通信規格「CAN-FD」にも標準対応しています。これにより、趣味のロボット工作だけでなく、産業用の装置開発にも応用しやすい設計になっています。

3ROS 2との連携

ロボット開発で広く使われているソフトウェアの枠組み「ROS 2(Robot Operating System 2)」に対応していることも案内されています。すでにROSを使ってロボットを開発している人であれば、既存の資産を活かしながらVENTUNO Qに乗り換えやすい設計です。

かんたん説明
「AIが考える」と「ロボットが動く」の間には、本当はわずかな「間(ま)」が生まれがちです。たとえば、カメラがコップを見つけてから、アームが実際に動き出すまでに時間がかかると、コップが先に動いてしまうかもしれません。VENTUNO Qは、この「考える」と「動く」を同じボードの中に同居させることで、その間(ま)を極限まで縮めているのです。

Arduinoは、VENTUNO Qで試作したシステムを、そのまま本格的な量産品に発展させられる「Works with Arduino」という認証プログラムも案内しています。SECOやToradexといった、組み込み機器向けの基板メーカーと提携しており、プロトタイプから製品化まで、コードを変更せずにスケールアップできる道筋が用意されています。



Chapter 06 / Use Cases

06具体的な活用シーン・ユースケース集

「結局、何に使えるの?」をイメージしやすくするために、Arduinoが公式に挙げている活用シーンを分野別に整理しました。

🏢 オフラインAIアシスタント

  • スマートキオスク:インターネット接続がなくても、音声や画像でその場で案内・応答できる無人端末
  • ヘルスケア・アシスタント:医療・介護の現場で、患者の状態を見守ったり、簡単な問いかけに答えたりする装置
  • 交通量解析:カメラ映像から、通行人や車の流れをその場で解析するシステム

🦾 ロボティクス・モーション制御

  • 視覚誘導マニピュレーション:カメラで対象物を認識し、アームが正確につかむ(6章・7章で詳しく紹介)
  • 自律移動ロボット:周囲の環境を認識しながら、自分で経路を判断して進むロボット

🏭 産業・品質管理

  • 自動品質検査:製造ラインで、カメラが不良品をその場でリアルタイムに判別
  • 予知保全:機械の振動や音から、故障の予兆を早期に検知
  • 工程最適化:生産ラインの動きをAIが解析し、効率化のヒントを提供

🏃 健康・フィットネス・エンタメ

  • フィットネス用途:PoseNetなどによる姿勢推定で、運動フォームをその場でチェック
  • 安全監視:転倒検知など、姿勢の変化から危険を察知する見守りシステム
  • インタラクティブゲーム:体の動きをそのままゲームの操作に変換する装置

🎓 研究・教育

  • アルゴリズムの試作プラットフォーム:大学や企業の研究チームが、新しいAI・ロボット制御手法を素早く試せる環境
  • 先端AI・ロボティクス教育:最新のAI技術を、実機を使いながら学べる教材としての活用
かんたん説明
むずかしく聞こえますが、まとめると「人の代わりに、見て・考えて・動く機械」を作るための万能な部品、というイメージです。お店の案内係、工場の検査係、体操の先生役など、いろいろな「係」になれる可能性を持った基板だと考えると、わかりやすいかもしれません。


Chapter 07 / Real-World Example

07実例:ロボットアームがモノをつかむまで

カタログスペックだけではイメージしづらい方のために、実際に公開されたデモの内容を紹介します。

VENTUNO Qでカメラ認識からAI判断、ロボットアーム制御まで行う流れ

実機デモの紹介

技術系メディアのHackster.ioが紹介したデモでは、「SO-101」という小型のロボットアームに、VENTUNO Qが頭脳として組み込まれました。アームの先端(グリッパー)と、アームを見下ろす位置の、合計2台のカメラを使い、机の上にあるアヒルのおもちゃを「つかんで、別の場所に置く」という、ピック&プレース(つかんで置く)作業を行うデモです。

このデモでは、Hugging Face社が公開している「SmolVLA」という視覚言語行動モデル(VLA:Vision-Language-Action Model)を使用しています。カメラ映像とアームの関節の位置情報をもとに、「次にどう動けばよいか」をVENTUNO Q単体で、クラウドに頼らずリアルタイムに判断しています。注目すべきは、この動作を学習させるために必要だったのが、わずか「50回分のお手本動作」だったという点です。少し前までは、高価な専用機材と大規模な開発チームが必要だった水準の作業が、1枚のボードと比較的少ない学習データで実現できるようになったことを、このデモは示しています。

このように、VENTUNO Qは「カメラで見る(知覚)」「何をすべきか判断する(意思決定)」「実際にモーターを動かす(行動)」という、ロボットに必要な3つのステップすべてを、1枚のボードの中だけで、しかもオフラインで完結させられる点が、大きな強みとなっています。

かんたん説明
「たった50回練習しただけで、アヒルのおもちゃをつかめるようになった」と聞くと、びっくりするかもしれません。少し前までは、ロボットに1つの動きを覚えさせるのに、何百回・何千回もの練習(データ)が必要でした。AIモデルの進化によって、お手本をほんの少し見せるだけで、応用的な動きまで真似できるようになってきているのです。
Chapter 08 / Arduino App Lab

08開発ソフト「Arduino App Lab」とは

VENTUNO Qを開発するための専用ソフトウェアについても押さえておきましょう。

1複数の開発スタイルを1つにまとめる

「Arduino App Lab」は、従来のArduinoスケッチ(組み込みプログラミング)、Linux上でのPython開発、そしてAIモデルの取り扱いという、本来はバラバラのツールが必要だった3つの作業を、1つの開発環境でシームレスにつなぐことを目指したソフトウェアです。Windows、Linux、macOSに対応しています。

2AIモデルを扱いやすくする仕組み

Qualcomm独自の生成AI実行環境「GenieX」や、「llama.cpp」「PyTorch」といった、AI開発で広く使われているフレームワークにも対応しています。あらかじめ最適化されたモデルも用意されており、ゼロからAIを組み上げなくても、用意された部品を組み合わせて開発を始められます。

かんたん説明
普通のArduino UNOを使う感覚で「動きのプログラム」を書きつつ、同じソフトの中で「AIに何を考えさせるか」も設定できる、というイメージです。本来であれば、マイコン用のソフトとAI用のソフトを別々に使い分ける必要がありましたが、App Labがその橋渡し役を担っています。

Chapter 09 / Price & Availability

09価格・購入方法・入手時期

気になる価格と、実際にどこで買えるのかをまとめます。

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価格は「予告価格」である点に注意

2026年8月25日の予約開始時点で、価格は299ドルからと案内されていますが、これはあくまで導入時の予告価格であり、Arduino自身が「将来的に価格が上がる可能性がある」と案内しています。購入を検討する際は、必ず公式ストアで最新の価格を確認してください。

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1人あたりの購入台数に制限あり

予約開始当初は、納期がおよそ4週間、1注文あたり最大2台までという制限が案内されています。業務でまとまった台数が必要な場合は、余裕を持って公式の販売チャネルに問い合わせることをおすすめします。

購入チャネルとしては、Arduino公式ストアのほか、DigiKey、Mouser、Farnell、RS、Robu.inといった、世界的な電子部品の販売代理店で扱われています。通常のArduino UNOのように、国内の家電量販店やホビーショップで気軽に手に取れる製品ではなく、現時点では電子部品の専門商社を通じた購入が基本となる点も押さえておきましょう。

かんたん説明
「予約(プレオーダー)」とは、まだ全部作り終わっていない商品を、先に「買います」と申し込んでおく仕組みです。順番に生産・発送されるため、申し込んでからすぐ届くわけではありません。人気のゲーム機の予約などと、似たイメージです。


Chapter 10 / How It Compares

10Raspberry Pi・Jetson・普通のArduinoとの違い

「結局、何が違うの?」をはっきりさせるために、よく比較される他のボードと並べてみます。

Raspberry PiとArduino UNOとVENTUNO Qの違いを比較した初心者向け図解

比較項目 Arduino UNO(通常版) Raspberry Pi VENTUNO Q
得意なこと センサー・モーターのリアルタイム制御 汎用的な計算・学習・ちょっとしたAI AI推論とリアルタイム制御の両立
AI性能 基本的に非搭載 機種によりAIアクセラレータを追加可能 専用NPUで最大40 TOPS
リアルタイム性 非常に高い OS経由のため、やや不得意 専用マイコンで高いリアルタイム性を維持
価格帯 数千円程度 数千円〜1万円台 299ドルから(高価格帯)
主な用途 電子工作の入門・プロトタイピング 学習、サーバー用途、画像処理など 本格的なAIロボティクス・産業用途

通常のArduino UNOは「リアルタイムに、決まった処理を正確にこなす」ことが得意な一方、AIのような重い処理は基本的に苦手です。Raspberry Piは汎用的なLinuxコンピュータとして優秀ですが、OS(基本ソフト)を経由する都合上、ロボットのモーター制御のような「ミリ秒単位の正確さ」を求められる場面では、やや不得意な面があります。VENTUNO Qは、この両者の「良いところ取り」を狙った、より専門的で高価格な製品という位置づけです。

AI専用ボードの代表格「NVIDIA Jetson」との違い

AI・ロボティクス向けのボードとして、Arduinoファンの間でもよく比較されるのが、NVIDIA社の「Jetson Orin Nano Super」です。こちらもエッジAI(手元の機器だけでAI処理を完結させる技術)に強い、代表的なボードです。

比較項目 Jetson Orin Nano Super VENTUNO Q
価格 249ドル 299ドルから(予告価格)
AI性能(密な演算=dense) 33 TOPS 40 TOPS
AI性能(疎な演算=sparse、カタログ表記) 67 TOPS 非公表(40 TOPSはdense値)
RAM 8GB 16GB
リアルタイム専用チップ 非搭載(GPU中心の設計) STM32H5マイコンを標準搭載
得意分野 GPUを活かした高速なAI推論そのもの AI推論とロボット制御の一体化
かんたん説明
AI性能のカタログ上の数字(TOPS)には、「sparse(疎)」と「dense(密)」という、2つの違う数え方があります。sparseは、AIの計算を一部はしょって数えた、やや大きめに出る数字。denseは、はしょらずに数えた、より実態に近い数字です。Jetson Orin Nano Superの「67 TOPS」はsparse表記、VENTUNO Qの「40 TOPS」はdense表記のため、単純に数字だけを比べると、実はVENTUNO Qの方が、同じ基準(dense)では高い性能を示しています(Jetsonのdense値は33 TOPS)。カタログの数字を比べるときは、同じ条件で比較されているかに注意が必要です。

価格は僅差で、Jetson Orin Nano Superの方が手頃です。GPUパワーを生かしたAI処理そのものの速度や、NVIDIAの充実した開発エコシステム(CUDAなど)を重視するならJetson、RAM容量やロボットの精密なリアルタイム制御まで1枚で完結させたいならVENTUNO Q、という住み分けになりそうです。

Chapter 11 / Getting Started

11初心者が今から始めるには

「いきなりVENTUNO Qを買うのはハードルが高い」という方向けに、今から始められるステップを紹介します。

1まずは普通のArduinoに触れる

VENTUNO Qは、Linux・AIモデル・ロボット制御という複数の専門分野が組み合わさった、上級者向けのボードです。まったくの初心者がいきなり挑戦するのは難易度が高いため、まずは通常のArduino UNOで、LEDを光らせたり、センサーの値を読み取ったりする基本から慣れていくことをおすすめします。

2センサー・モーター制御を練習する

VENTUNO Qのアクションブレインは、通常のArduinoと近い感覚でモーターやセンサーを扱います。サーボモーターやDCモーター、距離センサーなどを、普通のArduino UNOで一通り動かせるようになっておくと、将来VENTUNO Qに触れたときの理解がぐっと早まります。

3Pythonや簡単なAIの基礎に触れる

VENTUNO QのAIブレインは、Pythonをベースにした開発が中心になります。Raspberry PiなどでPythonと簡単な画像認識(MediaPipeなど)を触っておくと、VENTUNO Qの「考える」部分の理解がスムーズになります。

VENTUNO Qは、決して「今日からすぐ使える」ボードではありません。しかし、Arduinoが示したこの「AIとロボットの融合」という方向性は、今後の電子工作・ものづくりの世界に大きな影響を与えていくはずです。基礎を一歩ずつ積み重ねて、その時に備えておきましょう。

Summary

📝この記事のまとめ

Arduino VENTUNO Qのポイント

  • 名前の「VENTUNO」はイタリア語で「21」。Arduino創業21周年を記念した、同社史上もっとも高性能なボード
  • AIブレイン(Qualcomm Dragonwing IQ8)とアクションブレイン(STM32H5)の「デュアルブレイン構成」が最大の特徴
  • NPU性能は最大40 TOPS(dense値)、16GB RAM、64GB eMMCと、AI処理に余裕のあるスペック
  • LLM・VLM・音声認識・画像認識など、幅広いAIモデルをオフラインで実行可能
  • スマートキオスク、ヘルスケア、産業検査、教育・研究など、応用範囲は非常に広い
  • SO-101ロボットアームのデモでは、わずか50回の学習でピック&プレース動作を習得
  • 価格は299ドルからの予告価格(2026年8月時点)。Jetson Orin Nano Super(249ドル)とは住み分けが異なる
  • 初心者がいきなり使うには難易度が高く、通常のArduino UNOやセンサー制御の基礎から始めるのがおすすめ
Glossary

📖用語集:はじめての方のためのミニ辞典

本記事に出てきた専門用語を、やさしい言葉でまとめました。わからない単語が出てきたら、ここに戻ってきてください。

用語 かんたんな意味
SoC(エスオーシー) CPUやGPUなど、複数の機能を1つのチップにまとめたもの。VENTUNO QのAIブレインがこれにあたる
NPU(エヌピーユー) AIの計算だけに特化した、専用の演算器。写真や音声の認識を高速で処理する
TOPS(トップス) AIが1秒間にこなせる計算の回数を表す単位。数字が大きいほど高性能
MCU(エムシーユー)/マイコン 単体で動く小さなコンピュータの部品。VENTUNO Qのアクションブレイン(STM32H5)がこれにあたる
LLM(大規模言語モデル) 大量の文章を学習し、質問に答えたり文章を作ったりできるAI(例:Qwen、Gemma)
VLM(視覚言語モデル) 画像と言葉の両方を同時に理解できるAI。「写真に写っているものを言葉で説明する」等ができる
VLA(視覚言語行動モデル) 画像・言葉の理解に加えて、ロボットの「動き」まで判断できるAI。ロボットアームの実例で使われたSmolVLAなど
RTOS(リアルタイムOS) 「今すぐ正確に反応する」ことを最優先に設計された基本ソフト。VENTUNO QのアクションブレインはZephyrというRTOSで動く
eMMC(イーエムエムシー) 基板に直接はんだ付けされた、取り外しできないストレージ(記憶装置)。SDカードのようにデータを保存する場所
M.2 / NVMe SSD(高速なストレージ)を増設するための接続規格。より多くのデータを高速に保存したいときに使う
CAN-FD 自動車や工場の機械などで使われる、ノイズに強い通信規格。産業用途でよく使われる
ROS 2(アールオーエス2) ロボット開発でよく使われる、世界共通のソフトウェアの枠組み(フレームワーク)
エッジAI インターネット経由でクラウドに送らず、手元の機器だけでAI処理を完結させる考え方・技術

関連記事・参考資料

基礎を学べる記事

応用・関連記事

参考資料(外部・一次情報)

  1. Arduino公式「Arduino VENTUNO Q – Where AI Takes Action」, https://www.arduino.cc/product-ventuno-q
  2. Arduino公式ブログ「Introducing Arduino VENTUNO Q: your new AI, robotics, and actuation platform!」2026年3月9日, https://blog.arduino.cc/2026/03/09/introducing-arduino-ventuno-q-your-new-ai-robotics-and-actuation-platform/
  3. CNX Software「$299 Arduino Ventuno Q SBC combines Qualcomm Dragonwing IQ8 SoC and STM32H5 MCU」2026年8月25日, https://www.cnx-software.com/2026/08/25/299-arduino-ventuno-q-sbc-combines-qualcomm-dragonwing-iq8-soc-and-stm32h5-mcu/
  4. Hackster.io「Upgrading a Robot Arm with a New Arduino VENTUNO Q Brain」, https://www.hackster.io/news/this-robot-arm-got-a-powerful-arduino-ventuno-q-brain-e95a2bef0262
  5. Elektor Magazine「Arduino VENTUNO Q Brings Edge AI to Real-Time Control」, https://www.elektormagazine.com/news/arduino-ventuno-q-edge-ai
  6. Engadget「Qualcomm’s new Arduino Ventuno Q is an AI-focused computer designed for robotics」2026年3月9日, https://www.engadget.com/ai/qualcomms-new-arduino-ventuno-q-is-an-ai-focused-computer-designed-for-robotics-113047697.html
  7. Qualcomm公式プレスリリース「Arduino Announces Arduino VENTUNO Q, Powered by Qualcomm Dragonwing IQ8 Series」, https://www.qualcomm.com/news/releases/2026/03/arduino-announces-arduino-ventuno-q—-powered-by-qualcomm-drago
  8. Tom’s Hardware「Nvidia’s new $249 AI development board promises 67 TOPS at half the price of the previous 40 TOPS model」2024年12月, https://www.tomshardware.com/tech-industry/artificial-intelligence/nvidia-launches-new-usd249-ai-development-board-that-does-67-tops

※ 本記事の情報は2026年10月時点の公開情報をもとに作成しています。価格・仕様・発売時期は変更される可能性があるため、購入・導入を検討される際は、必ずArduino公式サイトで最新情報をご確認ください。


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